築120年を数える京町家のリノベーション現場。土壁の修復をご依頼いただきました。設計事務所からの「当時の表情をできる限り残したい」というご要望に応えるべく、三層の伝統工程を踏襲して施工いたしました。
i. 現状調査と素材分析
まず既存の壁を一部剥がし、土の配合・スサ(藁)の状態・小舞下地の劣化具合を調べます。土の色味は、京都産の聚楽土に近い赤褐色。スサの腐食は予想より少なく、下地の竹小舞も大半が再利用可能でした。
ii. 荒壁付け(一層目)
竹小舞下地に、藁スサと水で練った土を塗り込みます。これが「荒壁」。指で押し込むようにして、繊維と土を絡ませる。乾燥を急がせず、約三週間。京都の春の湿度が、ちょうど良い按配でした。
iii. 中塗り(二層目)
荒壁の上に、より細かい砂を混ぜた土を塗り重ねます。表面を平らにしながらも、わずかなコテ跡を残す。最終仕上げの「下絵」になる工程です。
iv. 上塗り(三層目・聚楽仕上げ)
京都伝統の聚楽土を、海藻糊と細かいスサで練り上げ、薄く均一に塗ります。乾く前にコテで押さえ、わずかに艶を引き出す。120年前の職人がそうしたように、私たちも同じ動きを繰り返しました。
v. 引き渡しと、これから
養生期間を経て、お引き渡し。建主様、設計者様にも喜んでいただけました。土壁は、季節とともに表情が変わります。湿度を吸って色が深まり、乾いて少し白く戻る。その「呼吸する壁」と暮らしていただけることが、私たちの誇りです。
四代目棟梁として、この仕事を任せていただけたこと、心より感謝しております。
— 山田 サンプル(4th Gen. Master Plasterer)
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